福岡発、捻くれゆるふわギターロックバンドNYAI(ニャイ)。これまでNUMBER GIRL非公式コンピ (MATSURI STUDIOからの紹介ツイートも !)参加~『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』にてピックアップされるなど全国的に存在感が高まる中、2作目の全国流通盤フル・アルバムをリリース !
福岡発、2011年の結成以来ゆるやかな活動ながらそのオルタナティヴな音楽性を静かに研ぎ澄ましてきたギターロックバンドNYAI(ニャイ)。PavementやPixiesなどのUSインディーや、NUMBER GIRL、SUPERCARといった日本のオルタナティヴ・ロックの系譜と言われながらも、バンク、ニュー・ウェイヴ、シューゲイザー、ドリームポップなどそれぞれの音楽を吸い込んで、捻くれゆるふわギター・ポップへと鮮やかに翻訳し、じわじわと期待を高めてきた、男女ツインボーカルの5人組バンドだ。そんな彼らの全国流通版フルアルバムとしては2作目となる『HAO』を通じて波のように寄せては返す感覚は、夢みたいな世界が現実かもしれないし、死だと思っていることは生かもしれない、そしてネガティブに並んだ言葉たちはポジティブの現れなのかもしれない、とかそんな相反する両面を往来しているかのよう。「オルタナティヴを研ぎ澄ますことがポップであること」なのかもしれないし「ポップを突き詰める姿勢がオルタナティヴを貫くこと」なのかもしれない、なんてそんなことをフワフワ考えるのにピッタリの、浮遊感と清涼感いっぱいのドリーミーなポップチューンの数々だ。とはいえここまでに述べた言葉の羅列さえ、発した先からフワリと優しく溶けてなくなるように、今作は新しくて堂々たるNYAIに出会うことが出来る。『HAO』というアルバムタイトルだけあって中国風コードを使ったポップな楽曲や、「Noise」とタイトリングされた作品がヒーロー感あるギターとアッパーな四つ打ちドラムでキャッチ―に仕上げられていたり、Sonic Youth ミーツ Erik Satie といった面持ちのノーウエイヴな作品には一撃を食らう。広くジャンルやルーツを跨った音楽たちが境界線をふやかして溶け合う喜びが、キラキラ音になって煌めく。そして今までのNYAIなら、ギターがエモーショナルに響いたりドラムがドラマティックに楽曲を盛り上げることはあっても、ボーカルが飄々としてバランスを保っていたところもあるのだけど、今作ではボーカルが感情を露わにする楽曲もあって、NYAIにとってのポップソング新章への一歩を踏み出したように感じた。NYAIの歌詞はいつもどこか諦めていて、どこか疑っている。そこがオルタナ然としているのか、「諦めないで、信じること」なんかを歌うようなポップソングとは真逆なのだけど、捻くれた言葉から感じるのは本当は真っ直ぐだからこそ疑い、疑うゆえに捻くれ、捻くれた末に後悔しているのではないかということ。さっきまで誰かと笑い合ってキラキラした時間を過ごしていたのに、ふとしたときに小さくウッと声を出して思い出す報われない自分と少しの後悔のような、たっぷりの煌めきの中にそこはかとなく漂う憂い。既存のオルタナティヴもポップも、現実も夢も、生も死も真っ直ぐ見つめ再解釈したNYAIなりの骨太なポップチューンたちが誕生した。願ってももがいても覚めることのない現実の中に、少しの諦めとそれでも笑って前に進むやさしさを、手に入れたみたいだ。こんなにも、音楽も人間も愛しい眼差しで包み込むことが出来るNYAIだから、すぐにでも多くの音楽に愛され、多くの人々に愛される日がくるだろう。
- 1. Jackie chan`s J
- 2. Noise
- 3. Buckwheat
- 4. Yumeshibai
- 5. Boredom
- 6. 22column
- 7. Chinese daughter
- 8. Spicy beans
- 9. Circular saw
- 10. Ghostly turn
- 11. Meaningless