稀代のカルト・ヒーロー、ダン・トレイシーが率いジーザス&メリー・チェイン、パステルズからニルヴァーナ、ペイヴメント、MGMTまで多くのアーティストに多大な影響を与えてきたポスト・パンク/インディー・ロック・レジェンド、テレヴィジョン・パーソナリティーズ。ヴェルベット・アンダーグラウンドを想起させる美しくもダークなサイケデリック/アシッド感が全体を覆う3枚目のオリジナル・スタジオ・アルバム。(オリジナル発売 1984年)

消息不明、ホームレス生活、ドラッグ依存、収監、出所と破天荒な人生を送ってきたカルト・ヒーロー、Dan Treacyが率いたTelevision Personalitiesは60年代のブリティッシュ・ロックに影響された清涼感あふれるメロディとポップ・センス、ポスト・パンク的な実験性をもったストレンジな楽曲、目を見張るようなシャンブリング・ポップからサイケデリアの果てまで、そのシニカルかつナイーブな感性とサウンドはThe Jesus and Mary Chain、The Pastels、Nirvana、Pavement、MGMTなど、さまざまなアーティストに影響を与えてきた。気まぐれで破滅的なソングライティングをするDan Treacyを中心にUKで結成されたこのバンドは、70年代後半、パンク・ムーブメントが低迷し始めた時期にレコーディングを開始した。バンドは紆余曲折しながら1978年の「Part Time Punks」(EP「Where’s Bill Grundy Now?」収録)から2010年の「A New Tattoo」(アルバム『A Memory Is Better Than Nothing』収録)までの一連の楽曲とアルバム（1981年の『And Don't the Kids Just Love It』や2006年の痛快な『My Dark Places』などの名作）を生み出したが、それらは常にフックがあり、感情的にパワフルで、Dan Treacyのアウトサイダーなビジョンとユニークな声を理解する人々に愛されてきた。Dan Treacy、Ed Ball、Mark Sheppardの3人で構成された最初の比較的安定したラインナップは、常にゆるやかな結びつきを持ったグループで、1981年のデビュー・アルバム『And Don't the Kids Just Love It』をレコーディングした。その後、TreacyとBallはいまや伝説と化している(OasisやMy Bloody Valentine、Primal Screamなどを輩出したCreation Recordsのオーナー、Alan Mcgeeがレーベル設立時に多大な影響を受けた)自分たちのレーベル、Whaam! (後にDreamworldと改名/1988年までレーベルは続いた）を設立し、同レーベルより1982年に『Mummy Your Not Watching Me』を発表。Ed Ballは1982年のデモや未発表音源などをコンパイルした『They Could Have Been Bigger Than the Beatles』をリリースする頃に脱退。バンドは1984年にIlluminated Recordsからダークでムーディーな『The Painted Word』、翌年にはライブ・アルバム『Chocolat-Art』をリリース。新たにDan Treacy、元Swell MapsのJowe Head、ドラマーのJeffrey Bloomの3人で構成されたバンドは、1989年にFire Recordsとの契約を獲得し、同年末にEP「Salvador Dali's Garden Party」、1990年にはモッズ風味の『Privilege』を発表。いくつかのシングルやEPをリリースした後、1992年に2枚組LP『Closer to God』を発表し、多くの批評家から高い評価を受けた。2011年末、Dan Treacyは脳に血栓ができてしまい、緊急手術を受けることになった。これは病状が回復するまで音楽活動ができないほど深刻なものだった。Dan Treacyの療養中も、新たなクラシック・インディー・ポップ・ファンの間でバンドの知名度は高まり続け、2017年には最初の4枚のアルバムがリイシューされ、翌年にはDan TreacyとJowe Headが録音した1990年のデモを集めた『Beautiful Despair』がリリースされている。