ホット・ワックス(Hot Wax)/インヴィクタス(Invictus)は、1969年にモータウンを退社したヒットメイカー集団ホランド=ドジャー=ホランド(Holland-Dozier-Holland、以下H-D-H)が設立したレーベル。モータウン在籍時には〈Stop! In the Name of Love〉や〈You Keep Me Hangin’ On〉など数々のヒット作を手がけた作家チームが、印税を巡る対立からモータウンからの独立を決意。デトロイトを離れ、自らの創作拠点を築くべくニューヨークへ活動拠点を移した。
設立直後の大きな成功例がグラス・ハウスの〈Crumbs Off the Table〉だ。デビュー曲ながらR&Bチャート上位にランクイン。これを受けH-D-Hはプロダクション体制を本格化させ、以降のヒットメーカーとしての地位を確立するに至った。
Invictusの屋台骨を支えたのがチェアメン・オブ・ザ・ボード。1969年発表の「Give Me Just a Little More Time」で全米R&Bチャート3位を記録。続く「Chairmen Of The Board」や「Working On a Building of Love」もスマッシュヒットを放ち、Invictusの音を象徴する存在となった。
一方、Hot Waxの最重要アーティストとなったのがフリーダ・ペインである。オーディションは電話一本による即席形式で行われた。エディ・ホーランドからの電話を受けたPayneが、マイクなしでフルボリュームの歌声を聞かせたところ、その場で契約成立が決まったという逸話を残す。1970年リリースの「Band of Gold」は英国シングルチャート1位、米国でもR&B4位を獲得し、切ないメロディと緻密なアレンジが世界中で愛される大ヒットとなった。
また、Hot Waxからは女性トリオ、ハニーコーンも人気を博した。もともと地元クラブのセッションユニットだった彼女たちは、未完成のデモ音源を持ち込んだパーティー会場でH-D-Hの目に留まり、即日契約に至ったという。1971年発表の〈Want Ads〉は全米チャート1位を飾り、その後も〈Stick Up〉や〈You’re Gonna Miss Me〉などソウルフルなヒットを続けた。